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◇◇茶の醍醐味◇◇
世界最初の茶書に、茶経 (ちゃきょう)があります。「さけい」とも読みます。中国唐代の文人陸羽(りくう)(?―804)が、上元初年(760)ごろに書きました。唐代に飲まれた団茶(だんちや)の製法、道具、茶器、煮方、飲法などが、三巻10章に分けて書かれています。冒頭は「茶者南方之嘉木也(ちやはなんぽうのかぼくなり)」から始まり、茶の源流や故事にまで言及しているすぐれた書です。茶は清行倹徳の文人の高雅な遊びであると説かれていることは、、日本国五山僧や煎茶(せんちや)の世界にも大きな影響を与えています。
もともと、中国において、茶は薬用として用いられていました。 茶の効用について陸羽は、「茶経」の中で、「茶ノ用タル味至ッテ寒ナリ。飲ヲナスコト精行倹徳ノ人ニ最モヨロシ。モシ熱渇凝悶脳疼ニ目渋リ四肢煩ヒ百節舒ヒザルトキ四五啜スレバ醍醐甘露ト抗衝ス」と述べています。つまり、味が寒だから、行いがすぐれ、つつましい徳のある人にもっともふさわしい飲みものだとして、もし熱があって渇き、気が鬱し、頭痛がし、目がしばたき、手足がいたみ、節々がのびやかでないときに、この四、五杯ものめば、醍醐味や甘露の水と良い勝負の味がする、というのです。
わが国に茶が渡来し最初に書き記された栄西の(きっさようじょうき)には「茶は養生の仙薬なり、延命の妙術なり」と記されています。「喫茶養生記」上下二巻には、茶経と同様、喫茶の薬効が説かれています。著者の建仁寺(けんにんじ)開山栄西(えいさい)禅師が、1214年2月、将軍源実朝(さねとも)が二日酔いで苦しんだとき、茶一服とともに「茶徳を誉める書物」としてこの書が献じられました。その物語は、『吾妻鏡(あづまかがみ)』にでてきます。「喫茶養生記」の初治本は1211年(建暦1)、再治本は1214年(建保2)に成立しました。上巻には茶の生理学的効能を説く「五臓和合門」が叙され、下巻には鬼魅(きみ)を駆逐する桑の病理学的効能を説く「遣除鬼魅門」が叙されています。茶と桑の薬用効能をあわせ説いたところから、室町時代には「茶桑経(ちやそうきよう)」ともよばれました。
栄西(えいさい)1141〜1215 禅師は、平安末期から鎌倉初期の高僧で、中国、宋に2度わたり、臨済禅を日本につたえ、臨済宗をひらきました。おさなくして仏教の教学に興味をもち、14歳のとき比叡山延暦寺で受戒、19歳のとき伯耆(ほうき)大山寺(だいせんじ)で天台密教の奥義を学びました。はじめて中国にわたったのは、1168年(仁安3)、28歳で明州に数カ月間滞在し、この地が南宋禅が隆盛をきわめていたので、栄西の関心も禅にうつったのです。帰国後、博多湾に面した今津にいて、再渡航の機会をまったが、そのうちに南宋禅に対する関心から、インドにわたって仏跡を巡礼して仏法再興の思いが深まっっていきました。 1187年(文治3)、南宋の臨安府に着き、陸路インドにはいることを願いましたが、許されず、帰国の船が難破して温州に漂着しました。その地で天台山万年寺の虚菴懐敞(こあんえじょう)に師事し、3年、南宋禅の修行にはげみ、明菴(みょうあん)の道号をさずけられました。91年(建久2)に帰国してから九州各地を遍歴、95年には博多に聖福寺を建て、戒律を重視する禅をひろめる第一歩としました。 しかし、延暦寺の激しい反発にあいました。「興禅護国論」をあらわして弁明しましたが、布教を禁止されてしまいます。このことにより、真の禅をひろめる決意を強めます。鎌倉に行き、鎌倉幕府の北条政子に近づき、寿福寺の建立に協力しました。その後京都にある幕府の直轄地に建仁寺をたて、さらに東大寺の復興にも力をつくしました。 このような背景を思いながら、日本の茶の湯の原点ともいえる「喫茶養生記」を考え、以後流行する喫茶の風習に想いをよせる時、『吾妻鏡』に語られる物語の歴史的意義が感じられます。鎌倉時代の仏教の変遷の原点が、【茶】であったとも言えるからなのです。 茶の道をたしなむからには、この位の事々は、知っておきたいところです。現在行じられる日本文化は、生きた日本の歴史そのものなのです。過去・現在を内在した今の今が、未来の扉を開きます。茶を一服喫しながら悠久の時空を感じられるとはなんと素晴らしい事でしょう。是非とも、まことの日本人には、生きた日本文化そのものを身に纏っていてほく思います。それでこそ、国際人として恥ずかしくない日本人となれるのではないのでしょうか。自分の国のこと、自分の民族のことなどなど知らずに国際的場に臨むとき大変な虚無寒に襲われます。日本の伝統は、一日で、身につくようなあさはかな道ではありません。日々心がけることにより、おのずと身についてくるものなのです。謙虚に正しく行ずる姿こそが、究極の品位を生み出すのです。
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